データ活用で
統合の歴史に変革を
VISIONを旗印に
多様性を伸ばす
企業風土づくり


日鉄鋼板株式会社
執行役員
門矢 清
Interviewer
臼井 弥生

2004年に大同鋼板、大洋製鋼の統合により発足した日鉄鋼板。
さらに2006年には、住友金属建材と、2020年には、日鉄日新製鋼建材と統合し現在に至っている。
統合を重ねた歴史と多様な人材によって成り立つ同社では、経営ビジョン・企業理念の共有や浸透を
経営陣が先頭に立って進めると共に、自発・自走力を育む職場と個人の活性化を狙いとした活動を継続的に実施。
統合による規模拡大のなかで直面した課題を役員・経営幹部・管理職層とが
ワンチームとなって解決してきた過程と、データ活用の真価について執行役員・門矢清氏に訊いた。

目指すは、強固な一枚岩
経営における企業文化の
重要性とその取り組み

日鉄鋼板株式会社では2014年より組織風土を整え、社に相応しい企業文化創出を目的とする取り組みとして「企業文化創出活動」を全社的に推進。その一環としてCOALESCENCE(コアレッセンス)の前身プログラムである組織風土調査を導入・実施し、統合による規模の拡大に比例して広がっていく会社と現場とのギャップを埋めるべく、共通目標の設定および共通認識の深化にデータを活用してきた。

門矢
執行役員
統合により会社としてはひとつになったけれども、それまで則してきた各会社のバッググラウンドがあるなかで、まずはハード面を整えること、具体的にはシステムや仕事のやり方を揃えるということに注力してきました。その次の段階に入るにあたって、考え方を一つに揃えていくことに着手したのですが、そもそも多数の社員が今の会社の状態をどのように理解しているのかを知る必要があるのではないか。我々の会社の健康状態を一度立ち止まって知る必要があると思っていました。そこで、「企業文化創出活動」を立ち上げた直後の2014年、アイ・コミュニケーションズ社へ組織風土調査を依頼し、そこから見えてきた課題に対して実態に合った施策を毎年展開してきました。

当時から調査結果を活用したマネジメントリーダー研修などを通じて、管理職層の継続的な変革促進をサポートしてきたアイ・コミュニケーションズ社。同社社長 臼井氏は「現場の認識と経営との距離感」をキーワードにこう振り返る。

臼井社長
高い意識をもった社員の方が多くいらっしゃる反面、そもそも自分が属している日鉄鋼板とはどういう会社なのかということをより理解していただく必要がある状態でした。我々にご依頼いただいた時点で幹部の方々はその必要性を認識されていて、経営ビジョンや企業理念についても既に社内でプロジェクトを組み策定されていました。それらを一般社員の方々に浸透させ企業文化として定着させるためのお手伝いを続けています。

数値がバックアップする
マネジメントの質
組織風土について議論する価値

組織風土調査の導入以降、数値化された調査結果を基に、まず経営層が検証ミーティングを行い翌年度に向けた課題を設定。その後、社員一人ひとりに至るまで自らが主体的に課題を設定し、ビジョン実現に向けた活動を推進するというサイクルが徐々に定着。「新年度の自身の課題を考えるにあたって、今では調査結果を待っている社員もいる」と門矢執行役員も取り組みによるポジティブな変化を感じているそうだ。

門矢
執行役員
統合会社は何もしないとバラバラになるリスクがあるわけですが、生い立ちの違いとさまざまな経験による引き出しの多さは、方向性を束ねさえすれば大きな力になる。信念というと言い過ぎかもしれませんが、そこは外さずに展開をしてきています。経営層がその時々の組織風土について議論し、どのような在り方が望ましいのかをしっかり見定めたうえで全社員をリードしていくということは重要ですし、役員間でしっかり議論し、生み出された方針がしっかり下まで繋がっていく。その後の1年がこれで決まるんだというくらいの感覚で社員のみんながこのサイクルを大事にしてくれていることに大きな手ごたえを感じています。

数値化された社員のモチベーションや自己成長の実感は、マネジメントの在り方を考えるうえでも活きている。バックグラウンドの違いを力として発揮できる組織づくりを目指し役員・経営層が率先して「企業文化創出活動」をリードしてきた同社では、数値に基づいた管理職同士の意見交換も積極的に行われてきた。

門矢
執行役員
調査データを活用したマネジメントリーダー研修というものを毎年実施しています。それぞれの拠点で部下を預かるライン長にとっては、統合による規模の拡大と新しいやり方に対する戸惑いは当然あると。そこで、「ここだけは会社として外せない」ということについては、その意味合いを研修を通してしっかり共有し、どのように展開するかライン長を起点に応用的にやり方を工夫し開発しながら、全社員への浸透を図っていきました。

トップダウンだけでは
真の多様性は育たない
統合による新たな課題を
組織力に変える企業風土とは

トップダウンだけではなく、データという全社共通の指標を基にマネジメント層も成長・進化していくこと。そして、これら一連のプロセスが結果として、課題であった統合による多様性を組織のパワーに変えていくための大きな推進力になっている。
さらに、日鉄鋼板に根ざした「組織の成長をデータで確認する習慣」は、2020年7月の日鉄日新製鋼建材株式会社との統合においてもその価値を発揮していると臼井氏はいう。

臼井社長
旧・日鉄鋼板には、診断やデータを活用することで、どこに関係性があり、何を改善すれば良くなるのかを客観的に見つけられる方がたくさんいらっしゃいます。マネジメント層にそういった力があれば、合併会社は人事交流がスムーズになり、長所の理解や問題点の把握が的確に出来るようになる。あとは、今回一緒になった日鉄日新製鋼建材の管理職の方々がどのくらい早くなじめていけるか。そういった意味では、時間をかけて融合するソフトランディング的なものではなく、スピード感のある経営に有効なツールとしてもCOALESCENCEを生かせると感じています。
門矢
執行役員
向かうべき方向と今年度の方針に対する社員一人ひとりの頑張りがしっかりと延長線上にあるようにすること。そのためにも上位方針に対して、上長自身が前年度の振り返りを行い、理念の体現を通してビジョン実現に向かっているかということについてメンバーとひざ詰めで対話しなければ始まりません。その際に、「数値」が対話のキーとなります。数値は認識の合致度や違いを確認する上で、シンプルかつわかりやすい共通言語となります。
今後、新しい戦力も入ってきますし、これまで前線で踏ん張ってくれていたベテランエキスパートの方々も抜けていく。世代交代というどこの企業もが乗り越えていく過程においても、データの力を適切に活用しながら、会社をより良くするための主体的な取り組みとして「企業文化創出動」を続けていきたいと考えています。

統合・合併の歴史のなかで、経営ビジョンとして掲げる
「美しい未来づくりへの挑戦」を続けてきた日鉄鋼板株式会社。これまでに築かれた組織としての一体感と多様性を尊重する風土、そしてデータの力を活用した組織や人の成長サイクルが、さらなる発展に大きな働きをもたらすだろう。

これまでに築かれた組織としての一体感と多様性を尊重する風土、
そしてデータの力を活用した組織や人の成長サイクルが、さらなる発展に大きな働きをもたらすだろう。


日鉄鋼板株式会社

同社は主に建物の屋根や壁に使われるめっき・塗装鋼板および金属サンドイッチパネルを製造・販売。日本製鉄グループの一員であり建材薄板業界のリーディングカンパニーとして、お客様をはじめとする社会からの「信頼」を獲得し、そして「前進」する企業を目指している。

設立 1950年2月
資本金 125.88億円
所在地 〒103-0023 東京都中央区日本橋本町
一丁目5番6号 第10中央ビル
門矢 清
日鉄鋼板株式会社 執行役員
1993年に新日本製鐵入社、人事、営業、財務などを幅広く経験。2007年に同社グループの日鉄鋼板に転じた後は、法務、内部統制、総務、人事など、一貫して経営管理に関わる職務に携わり現在に至る。2021年4月より執行役員。

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